次は戦場で会いましょう

かんがえたことを書き記す。

番外 深刻なうつ一歩手前の身体になった感想

うつ病」と聞くと、皆さんはどんな状態を想像するでしょうか。

死にたいと思いながら身体を引きずって身を投げる光景でしょうか。この世のすべてに絶望して刃物を手首に刺すような光景でしょうか。無気力で地面に寝そべっている光景でしょうか。

それも、精神病の症状によるものだと思います。しかしそれは、本当に最後の最後の症状です。そんなギリギリの状態だけが「精神病」と言うのではないと、わたしは思っています。

ということで、今回はちょっとした番外として、わたしが体験した、「精神病になると身体がどうなるのか」という話をします。もしこれを読んで「自分ヤバいかもな」と思った人は早めにお医者さんに行くことをお勧めします。

一応言っておくと、わたしは精神病のお医者さんでもなく、あくまでも患者になったことのある一人です。あしからず。

 

わたしは病の種類としては、「適応障害」と呼ばれるものにかかりました。

調べてみたところ、「うつ」よりも軽い症状らしいです。ただ、精神科は患者さんのお話を聞いて判断するしかないので、本当にそうだったのかは分かりません。正直先生に全部を話せていなかったので、もしかしたらまた違う病だったのかもしれません。

先生曰く、「今にも溢れそうなコップいっぱいの水」状態だったみたいです。表面に膜が張っていて、あと一滴水が加われば取り返しがつかないことになっていたとの事。

 

精神病になったきっかけは、社会人一年目のストレスです。詳しくはこのブログの過去記事に書きましたが、周りからの監視の目、表面上のお付き合い、というのに慣れず、どんどん身体が異常になっていきました。

 

では、具体的にどんな風におかしくなっていったのか。

 

精神病とは、一言で言ってしまうと脳のバグです。頭がきちんと働かず、酷いと日常生活もままならなくなっていきます。

……とまではよく聞く話ですが、問題は、「脳がバグると、どうなるの?」という事です。

身体と心に解離が発生し、どんどん亀裂が広がっていきます。身体のコントロールがきかなくなってきます。その具体例を、症状が軽かったものから下に挙げていきます。

 

まず、感情の起伏が少なくなってきます。同時に、他人に対して前より冷たく当たるようになっていました。

姉からも「最近のひおりなんか冷たいよね」と言われましたが、ふーんくらいで済ませていました。この段階では、まだ精神的なもののせいとは気付いていません。

仲の良い友人から「遊びに行こう」という誘いがあっても、前までは喜んで行っていたところを、「今日は疲れてるから断ろう」と避けていたのもありました。自分に余裕がなかったので、他人を気遣うことがなくなっていきました。

 

次の段階として、何をしていても落ち着かなくなりました。

仕事中も、仕事が終わっても、帰って家にいても、仕事の事を考えてしまう。こうしている間にも、自分を監視する方法を考えているんだろうか。今も職場の人から快く思われていないのだろうな。などなど……。勝手な思い込みをどんどん募らせていきました。

 

何より分かりやすかったのが、記憶力と体力の低下です。

職場で業務についてのテストがあったのですが、何をやっても頭に入ってこないので、悪い点になっていく。勉強したはずなのに覚えられない。物忘れというレベルを超えています。酷かった時は、何ヶ月もやっていたルーチンワークのやり方をぽっかり忘れました。

体力は、仕事自体はデスクワークだったので分かりにくかったのですが、遊びに行くと顕著でした。2時間外にいたら疲れ果てます。そこまで激しい運動もしていないのに、です。

わたしの場合、「監視の目」がトラウマになっていたのもあって、特に電車に乗ると吐き気と目眩が止まりませんでした。人通りが多い場所に行くと、身体が勝手に緊張して、ただでさえ少ない体力の消耗が激しい。30分でふらふらになっていました。一日が長く感じるようになりました。

集中力も下がっていました。文章を読めない。情報が処理出来ない。一時期ツイッターの表垢から姿を消していたのはそれが原因です。次々に流れてくる情報を処理出来なくなるのです。同じ理由で、音楽も聞けなくなりました。「どのような旋律か」の情報が処理出来ないので、頭痛がするようになりました。

精神病は、気分を鬱々とさせるだけではなく、肉体的にもあらゆる事が出来なくなってしまいます。物理的に、身体が処理出来ないのです。わたしはこの頃、心が身体を傷付けている感覚すらありました。「何とかしろ」という心の号令に、身体が付いていけないのです。脳がバグって、解離を起こしているから。

 

そして、自分でも「これはまずい」と思ったのが、あらゆる物からの興味の喪失です。

わたしは三次元二次元問わず、好きな物を愛しているオタクです。今は元気になったのであらゆる物を嗜んでいますが、この頃は途端に興味を無くしていました。

自分でも一番驚いたのが、友人から誕生日プレゼントを貰った時です。好きなキャラクターのグッズを貰ったのですが、それを見ても、全然嬉しくなかったのです。今までのわたしでは考えられない事でした。対応も、ものすごく素っ気なく返していたと思います。当時は疲れていたからと思っていましたが、今思うと本当に異常です。

いくらでも語り尽くせるほどに好きなキャラクターが、好きなアイドルが、好きではなくなっていきました。姉にDVDを見る事を誘われても面倒だからと見ない方を選択していました。

今思うと恐怖でしかありません。本当に生きる気力を無くしていたのだと実感します。

流石にこの対応はおかしいと思われたのか、姉はこの時ぐらいからわたしが精神病であることを疑い始めたそうです。

 

それからわたしは一応、診断書を貰って一ヶ月の休職を貰いました。

周りから「ゆっくりしたら良いよ」と言われ、始めの数日はただただベッドに寝ていました。休職を貰ったからと言っても、外に出る気力も体力もなかったのです。

遊ぶにもすぐに限界が来るので、友達と会うのも気を遣わせました。今思うと、わたしに合わせてくれた友人達には感謝し切れません。せっかくの誕生日プレゼントを当時喜べなかったのは、今は後悔しています。けれど、今年は、何を貰っても嬉しいと思います。

 

普通に日常を過ごしている時も、遊ぶ時も、身体が悲鳴を上げます。ふっと、脳が拒否反応を起こします。停止します。たとえ、どんなに親しく、久しぶりに会った友達でも。

精神病になって、一番怖いと思ったのはそこでした。何もかもに気力をなくし、色んな繋がりを断ち切るところでした。

脳のバグは恐ろしいです。気持ちだけの問題ではない。自分の視界から、あらゆる物をシャットアウトさせていく。あらゆる事を出来なくさせていく。

これはあくまでもわたしの経験ですが、他にも同じようなことがあると思います。精神病が、「気持ちが落ち込むだけの病気」だと誤解されませんように、この記事を残しておきます。