次は戦場で会いましょう

かんがえたことを書き記す。

変わる人と、変わってほしくない人

第1回はこちら。
https://musicbell17.hatenablog.com/entry/2019/05/09/223038


前回の記事はこちら。
https://musicbell17.hatenablog.com/entry/2019/05/10/220934


「さっきの話、もし、僕が話すのが苦手ってことを100人の人に話したとしたら、80人は、ふーん、そうなんだで終わると思ってて」
「20人は、こうしたらどう?ってアドバイスを入れてくる」
「で、ひおりちゃんはそれともちょっと違って……」


彼氏さんはいつもより饒舌になって、自分が思っていることを言葉にして語ろうとしてくれていました。優しくにこにこ笑っている表情とは少しちがって、とても真剣なまなざしでした。それでもどこか迷いのようなものがあったような気がします。


「その20人のひとは……なんていうかな。こうしたら良いよって同じ事は言ってくれるんだけど、なんか、僕が本当にそうなるとは思ってない、っていうか」
「こう、諦めてるような感じが……。友達にも話したことあるけど、そういうやつだよな〜で終わるような。あ、でも、それがその友達とのコミュニケーションだから、良いんだけど。でも、ひおりちゃんは違うから……」
「なんていうか……ずうずうしくないっていうか……愛があるよね」


さらっと「愛」が出てくる彼氏さんの口に、最早尊敬の意すら感じていました。なかなか出てくる物ではないと思うよ。
急に飛び出してきた甘いテイストにずっこけながら、わたしはかなりたどたどしく尋ねました。


「その……ずうずうしくないって、謙虚とは違うんですか?」
「ううん、謙虚とは違うね。うーん……やっぱり愛があるかな……」


ド正面の目の前で愛愛言われる身にもなってください!!!!!!!


「どう言って良いのか、僕にも分かんないんだけど……」
「とりあえずめちゃくちゃ恥ずかしいので、愛があるの話はもう良いです……」


忘れそうになりますが、ハンバーグ店の中なので、彼氏さんと背中合わせに中学生くらいの男の子が座っている状態でした。当時の心境をシンプルに言うなら、顔から火が出て店中のハンバーグを黒焦げにするところでした。
これで話は終わりになりそうだったのですが、先程の話の中で、1点、気になることが。


「でも、そのお友達、さっきの話を聞いてると、諦めてるのもありますけど彼氏さんにあんまり変わってほしくないみたいですね」
「そうかな?そうは言ってなかったけど」
「多分、お友達の中でも無意識だとは思うんですけど。彼氏さんが話すのが苦手で、それをそういう奴って言うことが彼氏さんとお友達のコミュニケーションで。で、彼氏さんが変わると思ってないのにそう言ってくるってことは、内心は本当に彼氏さんに変わられると困るんですよ。だってそれが二人のコミュニケーションなら、その手段がなくなってしまうことになるんですからね」


この話は、中高生のクラスとかで例えると分かりやすいと思います。
明るくてひょうきん者の生徒が急に大人しくなったり、「俺勉強やってなくてさ〜」と周りに言い触らしていた生徒が急に勉強をするようになったら、周りは驚いたり、茶化したりして、少なくとも今までと同じような関わり方は出来なくなってしまいますよね。
「そういう人」だと思っていた人が変わってしまったとき、人はとても動揺します。そんな人間になってしまったのかと幻滅することもあるし、もう一緒にいる意味も無いと去ってしまうこともある。本来、「変わる」ということは、ノーリスクではありません。
だからこそ、わたしは最初に彼氏さん自身はどうなのか確認したんですけど、そういうことならお友達とわたしが違うことにも納得がいきました。


「ちなみにわたしとしては、彼氏さんが話したいと思うなら話したいなと思いますよ。それが一番気持ち良いですから」
「そうかな……。でも、やっぱり、難しいね。何話してるのか、途中で分かんなくなっちゃう……」
「それ、彼氏さんが途中で、すごい頭回してるからだと思うんですよね。さっきの話聞いてて、なんとなく彼氏さんのくせが分かってきました」
「ほんと?」
「なんとなくですけど……あ、紅茶結構冷めましたね」


そうこうしてるうちに、湯気が上がっていた紅茶はすっかり冷めてしまいました。カップ2杯分の紅茶をいただき、ようやく夕食を終えて、わたしは車の助手席に乗り込みました。
あとは帰るだけとなってからも、まだ話は少しだけ続きます。


ここまでお読みいただきありがとうございます。
自分が変わったとしても変わらずに笑いあえるような人こそ、大切にしたいですよね。