次は戦場で会いましょう

かんがえたことを書き記す。

「俺のスカート」は、ここにあった

好きなドラマがひとつ終わってしまった。終わってしまったとは言いつつも、とても良い終わり方をしていたので、喪失感とかは特にない。終わったときに「良いものだった」と余韻が残る作品は、良い作品だと思う。

昨日最終回を迎えた、「俺のスカートどこ行った」。略して俺スカは、第一話から楽しみにしていたドラマでした。土曜夜のドラマは、コミカルテイストながらも味わい深いものが多い印象だったので。予告で何だか面白そうとワクワクしながら、実際観たらほんとに面白くて、毎週欠かさずに観ていました。


俺スカは、簡単に言うと、ゲイで女装家の先生が生徒達との絆を深めていく学園ドラマです。でも、このドラマで言いたかったことは、おおむね「ゲイとか女装家とか、そういうものに特殊な何かが秘められてるんじゃなくて、みんなそれぞれがやりたいことをすれば良い」ということでした。
ゲイ、女装家、という設定を付加したからといって、深くジェンダーやらなんやら、難しい方向に話を持っていかない姿勢がわたしは好きでした。「人間はみんな、したいことをして良いし、それはひとりひとり違う」。主人公ののぶおは、自分のやりたいことや言いたいことをズバズバと言っていく。その自然体な姿に、みんなが惹かれていく。いつしか、その素直な姿勢は、学校全体に影響を与えてゆく。


そんなのぶおの魅力は作品内でたくさん語られているので、今日はわたしが「この作品でしかこんなことは出来ない」と驚いたところの話をしようかと思います。


この作品には何人もの魅力的なキャラクターが登場しますが、中でもこの作品でしか出せないような子が、ひとりいます。作品の最初は登校拒否していた、安岡くん(これで漢字合ってるかな)です。
安岡くんは、最初は弟や妹、母親のためを思って行動する、心優しい男の子として出てきました。物語としては序盤の方に一度スポットがあたって学校に来ることになるのですが、その後、終盤にもう一度スポットが当たります。


それは、女の子になりたい、という願い。スカートをはいて歩いてみたかったという願い。
周りから気持ち悪いと思われるかもしれない、「普通」じゃないことは分かっている。それでも自分はやってみたいことを先生ののぶおに打ちあけ、学園祭の日にスカート姿で登壇し、みんなの前でその思いを打ち明けます。
「家族思いの男の子」として出てきた男の子のこの告白に、わたしはとても驚きました。確かに言われてみれば少し女の子っぽいところはあると思っていたのですが、のぶおのような「分かりやすいアイコン」を主人公として出した上で、安岡くんのように本当に日常に溶け込む、そういう願いのある子を出してきたことに。
同時に、大抵のキャラクターは大きな悩みをひとつ解決したら悩むパートは終わりだけど、安岡くんは第二の大きな悩みを出してきたことに。


そして。何より、その告白の後、本当に安岡くんは「女の子」として当たり前のように存在していたことに。
あまりにも自然だったから、最初全然気付かなかった。おや、スカートだ、とは最初分かったけど、度々女の子に混じってたから、「安岡くん」を度々見逃していた。あんまりにも仕草がかわいかったから。化粧もかわいくて似合っていたから。
いや、これはね、すごいですよ。何ならその導入だけで話を増やせるようなすごいことですよ、これ。クラスの子みーんな安岡くんを、ちゃんと「スカートをはきたくてはいてる子」として、「女の子になりたい安岡くん」として、当たり前のように日常でふれあってる。


真の理解とは、その深刻さについて話し合うことじゃない。それを当たり前のものとして、受け入れることだ。気を遣わないで、接することだ。
それをさらりとやってのけた俺スカは、本当にすごい。わたしは、この物語の裏の主役は、安岡くんだと思ってます。最終回ののぶおに手を振る安岡くん、本当にかわいかったよ。


今、男女平等とか、男尊女卑とか、そういうものについては世間はかなり敏感になっているように思う。そんな中で「女の子になりたい」とはっきりと宣言した安岡くんは、本当にまぶしくて、良いことだ。
自分がどういう存在であるかじゃなくて、自分がどうなりたいか、どう行動したいのか。なりたい自分になることほど、自分を好きになる方法はないよね。安岡くんも、わたしも、きっとそうだ。


ここまで読んでいただきありがとうございます。
わたしは、素敵なお嫁さんになりたい。