次は戦場で会いましょう

かんがえたことを書き記す。

「おはなし」って言われてみれば難しい。

「彼氏さん、話すの苦手ですか?」

GWの真っ只中、旅先で突如行くことが決まった大人気ハンバーグ店の順番待ちをしながらの、何気ない質問。今回の記事のきっかけはそんなところから生まれました。
流石に一泊二日の旅行の終盤ともなれば話すネタも尽きてきて、無言が続いていた後のふとした問いかけ。向かいの子ども達の喧騒にかき消されそうになりながら、彼氏さんが小さくうつむきました。


「苦手だね……」


しみじみとした響きがあったと記憶しています。今まで自分自身そう感じる事が多かったのか、数分前の雑談とは少し違う重さがありました。
ブログでは分かりやすく省略したり整えたりしていますが、彼氏さんが話す言葉は基本的に間が多いです。元々の気質がのんびりしているのもありますが、言葉を選ぶのに時間がかかっている印象でした。二人でいるときも八割わたしが話しています。
いわゆる「コミュ障」と言うと緊張から来るどもりや反芻があるようなイメージがありますが、それとはまた異なります。わたしが一ヶ月近くにいて感じたのは、端的に言えば「言葉が足りない」でした。


「今回の旅行のこととかも、お友達に話したりしないんですか?」
「うん、するんだけど……。なんていうか、あったことをただ話すだけだから落ちがなくって、で?って言われることが多くって」
「例えばわたしがお友達だったら、どうやって話します?」


うーん、としばらく腕を組んだ後。


「温泉に入ったんだけど、最初はひとりで……」
「はい」
「ゆっくり入ろうとしたらひとり来て、それでちょっと経ったらもうひとり来て……」
「はい」
「出ようかなって時に一気に四人くらい来たからシャワーが埋まっちゃって、それで待って、出た。おわり」
「あー……それは言われるかもしれませんね。出たってシンプルな感じわたしは好きですけど」


多分大切なのは「一気に四人くらい来た」のところなのでしょうけど、掘り下げがないから流れていくという印象です。


「埋まっちゃったとき、彼氏さんはどう思いました?」
「あー埋まっちゃったーって。シャワーふたつしかなかったし」
「じゃあその辺り言ってみたらどうですかね?今彼氏さんが言ったのって何が起こったかの流れだけでしたけど、埋まっちゃったところを掘り下げて止めたら落ちありますよね。ひとりだったのにどんどん人が来て待たされた!って」


このあたり分かりやすいのが、芸人さんのトークだと思います。
芸人さんの面白いトークには必ず「落ち」がありますが、結構な頻度で「そう来るんかい!」とか「何じゃそりゃ!」とか「本人が思ったこと」でエピソードが締められることが多いです。
うまい人だとお話の流れ自体を面白くつくりますが、それはかなりお話の上級者にならないと難しい。とすると、話が苦手な彼氏さんにはまずそちらを目指した方が良いと思ったのです。


そしてふと、わたしは大切なことをききわすれていることに気が付きました。


「彼氏さんは、話すの苦手って言ってましたけど、もっと話したいって思いますか?」


実はこの問いの答えは、おおむね予想が付いていました。その根拠は次回以降にまた書こうと思いますが、思い込みで完結させず、念のために確認しておこうと尋ねたのでした。


「えっと……うん。それは、思うね」
「じゃあ練習しましょうか。話って、練習すると変わると思うんです。わたしがお話の練習相手になりますよ」


口下手な彼氏さんですが、わたしはそれは本人の個性で良いと思っていたし、そこを変えて欲しいとは思いませんでした。けれど、本人が望んでいることなら話は別です。
呼ばれるまでの間、順番待ちをしつつ、わたしと彼氏さんは何回か話す練習をしました。わたし自身がやるならこう、という話も、違う話題でやるならこう、という話も。
そうこうしてるうちに順番が来て席まで通され、わたし的に一旦話は終わりかと思いましたが、肉汁たっぷりのハンバーグを食べ終わってからまだ続きがありました。


続きはまた明日。ここまでお読みいただきありがとうございました。
「口下手なひと」って話がうまい人からしたら言うことをきかせるのに便利ですけど、それだとやっぱり共同作業が難しくなっちゃいますよね。