次は戦場で会いましょう

かんがえたことを書き記す。

書きたかったものは、「キャラクターが好き」という気持ちじゃない

今回は、自分が書いた同人誌の話をする。本来、物語に対して長々と思うことを書くことはそんなにないんだけど(同人誌ともなれば、尚更で……)、今回は並々ならぬ思いを込めて書いたところもあるのと、四章公開間際なのもあり、ここに筆を取ることにした。


書いた話は、これです。
https://booth.pm/ja/items/1106521
https://booth.pm/ja/items/1245973
https://booth.pm/ja/items/1348618


上中下構成の、300ページを超える物語になっています。いわゆる「薄い本」と言われる同人誌にしては、わりと長めなお話になったと思う。これでも、結構大味にしたところもあるんだけどね。どのページを抜いても成立しないような、濃い話に仕上がりました。


ここからはあくまでわたしの創作に対する姿勢やスタンスが色濃く出るので、いわゆる※個人の感想です。として読んでくださいね。念のため。


わたしはこのブログで、何回かに分けて、インド兄弟のことを考えてきました。彼らの魅力もそうですし、彼らの悪いところ、欠点についてもじっくりと考えて、それも含めて彼らの魅力だとしてきました。
キャラクターというものを書くことにおいて、そのすべてを書ききるには、キャラクターの欠点に目を背け、盲目的ではいけないとわたしは考えています。影から目を逸らしていては、光を書ききることも出来ません。これは、数年前から、物語というものを書くときに意識していることです。
わたしが書きたいのは「キャラクターそのもの」であって、「わたしが思う、キャラクターの好きなところ」ではありませんでした。300ページという長い物語を書くとき、その存在の全部を伝え、その上でキャラクターの可能性というものを考え、書ききりたいという気持ちで同人誌に取り掛かっていました。
これをするのに必要なものは、冷静な分析によるキャラクターの情報であって、「こうなってほしい」という書き手の感情ではありませんでした。「こうなってほしい」が含まれてしまうと、そのキャラクターが秘めている最大級の情熱は書けないだろうと考えたからです。「こうなってほしい」からキャラクターを解き放つことで、初めてそのキャラクターが胸に秘めた何かが出てくるだろうと考えたからです。最大級の情熱を書くには、書き手は最大級に冷静でいなくてはならないのですから。
多分、これは、「そのキャラクターの好きなところを書く」というスタンスの方とは一線を画する考え方だと思います。けれど、わたしは一次創作のときからそういう考えでやっていますので、変えるつもりはまずありません。俺の料理に対するこだわりというやつです。「オウ、俺ぁな、ナトリウム塩は使わねえんだよ、たとえ海水が干からびても天然塩しか使わねえのよ」というやつです。


さて、何故こんなことを書いたのかというと、ブログで情報をまとめているとき、わたしはこんなことを思ったからです。
「なんでわたしはアルジュナさんが一方的にカルナさんを憎んでるって思い込んでたんだろうなあ」
インド兄弟をかんがえるタグから記事を読んでいただくと分かりやすいのですが、わたしは最初、カルナさんはアルジュナさんに何かの強い感情を抱いているとは思っていませんでした。紐解くにつれてそうではないことを知りましたが、わたしは「何故そう思い込んでたのか」に目を向けました。思い込むにしたって、そう感じるからくりがどこかに落ちているはずだと。
辿り着いたのは、アルジュナさんというひとの「強さ」でした。彼の、己に対する強い思い、そして語られる言葉が、読む人にカルナさんへの強い想いを印象付けていたのです。これは一種の「カリスマ」にも似ていると思います。英雄たらん人物には必要不可欠なものです。
強い思いは、時に人を見る目すら錯覚させる。これは、そう感じ始めた時に観た舞台「オセロー」でも強く感じたことです。どんな真実がすぐそこに転がっていようと、強すぎる光は影すらも消してしまう。
わたしはそれにがーんとつよーく感化され、今回の話を書きました。今回の話が長くなっているのも、その光と影を明かすまでの時間が必要だったからです。


わたしはこの本の終わり、こんなことを書きました。
「ぜひ、この物語は、2回読んでください」。それしか書きませんでしたが、わたしはこの話で、彼らの良さや欠点、未来への可能性だけでなく、そういう「強すぎて、みえないもの」を書きたかったのです。
この視点は、キャラクターの良さを考える創作の仕方では、決して見えないものだったと思います。こういうことがあるから、考えることはやめられないのだろうなあ。
もし四章でアルジュナさんが出てきたら、そんなところも注目してみてほしいなと、一介のファンは考えるのでした。


ここまで読んでいただきありがとうございます。
こだわりは、今までどこにも書いてなかったものを引き寄せる。