改めて、彼氏さんとのはじめまして②
前回はこちら。
https://musicbell17.hatenablog.com/entry/2019/07/13/234709
※引き続き彼氏さんの再現文章です。引き続きフェイクを入れています。
今週の打ち合わせ資料は、自分が用意した。自分でダウンロードしたフリーのソフトを使って編集したから、配ったときの反応がみんな物珍しそうだった。
木曜日の打ち合わせが始まるときと終わるとき、少しの余白時間がある。大抵はみんな客先の人と挨拶をしたり、最近どう?の話をしたり、思い思いに過ごしている。自分は積極的な方ではないから、時間が来るまでじっとしてた。
「あの、すみません」
誰だろうと振り向くと、ひとつ空いた席を挟んで、好母さんが自分に向かって話しかけてくれていた。
えっ、好母さんが話しかけてくれるなんて!こんなこと初めてだ。担当してる業務が全然違うから、仕事の話すらできなかったのに。
「この資料、どうやって編集したんですか?あまり見たことなくて……PCに入ってますか?」
「あ、これは、その……自分でダウンロードしてきたんです」
「そうなんですね!なんて名前ですか?」
いや、なんとなく分かってる。好母さんはまだ入ってきたばかりで、話しかけられそうな人が近くにいないから、暇そうで近くにいた自分に話しかけてきたんだ。
分かってるけど、でも、嬉しい。それにやっぱり、自分とは違って明るくて良い子そう。
名前を教えたら、ちょうど時間が来て、打ち合わせが始まった。ここからはいつもの時間だけど、いつもよりも前進した気がして嬉しかった。
それからまた数週間後。
「あの、今わたしと違う業務されてますよね。どんな感じなんですか?」
2回目だ!しかも今度はツールの話でもない。自分がやってる仕事の話をふってくれた。
「あ、えっとですね……」
自分は話すのが得意な方じゃないから、途切れ途切れで好母さんに今やってることについて教えた。興味なさそうに聞くだけじゃなくて、たまに質問もしてくれる。
好母さんと、全然脈なし、ということでもないのかもしれない。もしかしたら、もしかすると、仲良くなれるかもしれない。彼氏がいるのかどうかは、分からないけど……。仲良くは、なれるかもしれない。
でも、どうやって仲良くなれば良いんだろう。まずは何かきっかけを作らないと……。
※※再現ここまで※※
某日、訳あって、わたしは客先で仕事を進めることになった。打ち合わせで週1では来てるけど、いつもいる所よりも大きいビルなので、すごく緊張する……。
入り口まで迎えに来てくれた人は良い人そうだったけど、やっぱり環境が違うと緊張感が違う。作業場は打ち合わせをする時に何度か通り過ぎたことがあったので、そこがまだ救われた。
「それじゃあお願いね」
「はい」
返事はしたものの、しばらくは環境構築の時間なので、わたしは暇になる。あんまり手が動いてないのは良くないかもだけど、やることがないなら仕方ないよね。しかし広いなあ……。
「あの……」
声をかけられて顔を上げると、(彼氏)さんが立っていた。あ、打ち合わせの時に何回か話しかけた人だ。雰囲気が優しそうだから、この人だったら席も近いし暇なときに話しかけても良いかなって思っちゃうんだよね。でも、何の用だろう??
「これ、どうぞ」
すっと渡されたのは…………ボールペン?
会社のロゴが入ってるし、無料で貰えるやつかな……?
あ、赤と黒両方使えるタイプだ。
「?……良いんですか?」
「僕はもう持ってて、いらないので……」
「あ、そうなんですね。じゃあ、この前赤ボールペンなくて困ってたところだったので、貰いますね。ありがとうございます」
この言葉に偽りはない。高校の時に使って以来まったく出番がなかったので、この歳になって必要になったとき無くてとても困った。どうしてボールペンをくれたのかはまったくの謎だけど、新品でビニールに包まれているそれを筆箱の中にしまった。
「じゃあ、僕向こうにいるので……」
「はい。ありがとうございました」
ボールペンをゲットできたのは良いけど、でも、やっぱり謎は深まるばかりだった。
暇な時間、取り出して眺めてみる。……なんでくれたんだろう?わたし別に、あの人に何かした訳でもないのにな……。
客先から帰ったとき、リーダーさんが陽気に笑ってわたしの隣に座った。
「おう、向こうはどうだった?何か話したりした?」
「話……は少し。そういえば、(彼氏)さんにボールペンを貰いました」
「え??ボールペン??」
リーダーさんも目を丸くしてる。そうだよね、あんまり関わりの無い人に急に貰ったって言ったらびっくりするよね。
「なんでくれたかはよく分からないんですけど……これなんですけど、赤と黒のボールペン」
「へー……緑がないって文句言ってきた?」
「言ってないです!」
この反応からすると、別に客先恒例の手土産というわけでもないらしい。真相は闇の中だ……。
今日はここまで。もう少し続きます。
ここまで読んでいただきありがとうございます。友人内では、未だに彼氏さんは「ボールペンの王子様」のあだ名で呼ばれることがあります。ツイストペン回し出来そう。