次は戦場で会いましょう

かんがえたことを書き記す。

おばあちゃんとあみタイツ

タンスに入っているものを見られたり、ましてや下着をとられたりしたら、恥ずかしい。恥ずかしいどころか、この世の中では訴えられてしまう。人間にとってタンスの中を覗かれるのは、裸を見られたかのように恥ずかしいのだ。今回はそんな話である。

 

ある日、大都会を旅していた主人公、もといわたしは、ある家におじゃました。ダイニングテーブルや椅子は木製の立派なものだが、そんなものには目もくれず、わたしは一直線にタンスを目指した。中に何か入ってるかもしれない。

そして至って涼しい顔をして、タンスを開く。中にはほかほかの(かは説明がないが)あみタイツが入っていた。頭の中では男しかメンバーがいないので着る人が居ない、としか考えていなかった。

タンスの近くには、腰が曲がったおばあちゃんがいた。そして明らかに主人公を見ながら、主人公に向かって、このように言ったのである。

「あ、そこは……」

あっ。すみませんおばあちゃん。このあみタイツ、おばあちゃんだったんですね。へへへ、間違えました、失礼しました。へへへへ、気をつけやす。

とは言えない。残念ながら、おばあちゃん愛用のあみタイツは、主人公の懐にしまわれてしまった後だ。こんなにも手に入れたアイテムを元に戻したいと思ったことはない。ああ、ごめんよおばあちゃん。もしかしたら新調したばかりだったかしら。しかし、既に後の祭り。後のあみタイツだった。心に傷を残したまま、わたしは家を後にした。

 

一応説明しておくと、主人公は世界を救う勇者であって、各地の下着を集める下着ドロボー、下着マスターではない。しかし先ほどちらりと出たように、住民のタンスや壺、本棚にあるアイテムを手に入れたり読んだりすることで、手に入る知識もあるのだ。あみタイツの知識については余計そのものだが。

今までは人の家のタンスを開けたり、引き出しを開けたりしていても、周りの人は涼しい顔をしていた。実は主人公が取っていくために置いておいたのではないのだろうかと思うほどに、その空気は暖かく、無関心だった。

だが、今回はそうはいかなかったのだ。あの一瞬、おばあちゃんが絶望したような、とても悲しい顔をしたことは、今でも忘れられない。一度出したあみタイツは、もう二度としまうことは出来ない。

 

今回の物語は、全体的に「勇者とは何か」を主軸にしている。おばあちゃんからあみタイツを奪っても、彼は世界を救う勇者なのである。勇者とは何か。今まで散々別媒体でネタにされてきたような事に、改めて「ツッコミ」のような、「自虐」のような、「タンスを開けられたおばあちゃんの反応」を差し込んできたドラゴンクエスト11S。リアルとファンタジーは衝突する……そんなことを思わされたあみタイツの一時であった。

 

ここまで読んでくださりありがとうございます。

足から下が魚の人に会いました。ガンガンいこうぜ